『ボストン市庁舎』鑑賞

1月23日、街の劇場で『ボストン市庁舎』(原題:City Hall、監督:フレディック・ワイズマン、2020年アメリカ合衆国)をみてきました。

この映画は、世界都市、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンの市庁舎について。最も多様性のある市として知られるこの都市の、市長・市役所と市民たちの対話が映画を構成します。

この映画で焦点を当てられているのが、2013年〜2021年まで市長を勤めたマーティ・ウォルシュ氏。

アイルランド系移民という、自らも移民としてのバックグラウンドを持ち、かつボストン市民かつその市長として先人を切って、市民に関わっている姿が映し出されます。

そして特筆すべきは、誰もおいていかれない社会を自らの手でつくっていく様子です。そのために、どんな市民の声にも耳を傾け、「何かあったら311(緊急連絡先)か私に知らせてくれ。街で見かけたら声をかけてほしい」と訴えます。

アメリカ合衆国で最も多様性がある市としての問題は膨大です。差別(LGBTQ、人種差別、女性、障がい者)、ドラッグ、退役軍人や依存症患者へのケア、銃問題、教育、賃金、交通規制、等々。時には、ネズミ退治といった対処も市の役人が、マーティ・ウォルシュ市長に続くように、市民をサポートします。

また印象的なのは、マーティ氏がボストン市各地で開かれる市民との会合やイベントに顔を出し、市民と交流をし、自らの理念をかたるシーン。映画の中で、複数のイベントや会合を訪れスピーチをするシーンは、さすがアメリカ人!スピーチで自分の理念や思いをプレゼンするのが上手いな、と思いました。

また、市長自身がアイルランド系移民であること、4-5歳の時にガンで看護師に自分や家族をケアしてもらったこと、自分の大叔父が第一次世界大戦で戦死したこと、20代の時にアル中で苦しんだことなど、マーティ氏自身の経験から紡ぎ出される自らの言葉で、市民に深く寄り添い、心をつかんでいるように見えました。

リーダー自身が、様々な人種・宗教・階層の人たちを尊重している、というのは非常に重要ですよね。地位や名声を得ても、社会的立場の弱い人たちの人生を変えるために、自分の手でなんとかしよう!という姿は非常に心に響くものがあり、ドキュメンタリーでありながら、フィクションを観ているかのようでした。どこかの国や企業のトップにも見習ってほしいところです。。

映画自体は274分(約5時間)の長長編ですが、引き込まれるようにして見入ってしまいました。

休憩を挟みつつ、じっくり鑑賞することをお勧めします!

オフィシャルサイトはこちらから → https://cityhall-movie.com

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です